baguette

log [ コラム ] — s_o @ 21. 4月, 2005

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デブの少年がやってるバゲット屋によく行く。
(バゲットにトマトとかチーズとか肉とかいれて焼いたやつ売ってる)
デブがやってる食べ物屋って、無条件に信頼してしまう。
太ってることって、食への愛の揺るがぬ証拠に見える。
太っちょが作った料理で、顔がまがるくらい不味いのや満足できない不親切なアマウントに出くわしたことない。
イタリア系のデブ少年は、ノキ下でゲームボーイに執心。
こちらが挨拶すると、無表情にレジに入り 黙って注文を待つ。
店長であるはずの父親は大体おらんのでここはもう少年の店だ。
親父は隣のトルコ人カフェでトランプしてる。働けよおまえ。
少年は注文を聞くと、手慣れた手つきでパンをオーブンに放り投げる。
トマトを切って、チーズをほぐし、いっぱいひっついた鶏肉のパテをパックから丁寧に3枚取り出す。
無駄がない。
あどけない顔には表情もない。
この無愛想少年(しかもデブ) いい。
ヒトに愛されるニンゲンゆうのは、いつだって大抵その理由が見あたらない。

煙草を吸いながら、少年がオーブンについたタイマーと焼き具合を眺めるのを見ている。
、、いや、いつもこげてるぞ。そのタイマー、設定おかしい。

:::

金髪のグラマーな女が、その存在を不動のものにする強烈なフレグランスの渦と共に入ってくる。

少年の顔つきが変わる。

少年は、あからさまに動きの機敏さを増す。
しかも、なんかちょっと微笑んだ!
おい!おまえ!笑えるのか!

『サラダ、いれる?(いれたくない嫌いな野菜とか)注文ある?』
お、おまえいっつもそんなこと聞かずに全部いれるだろ!

日常は、揺るがない。
この視界のソトガワで起こりうるナニモノをも凌駕する、圧倒的なフツウの日々。
うんうん、いいぞ少年。童貞はいつでも非童貞になれるけど、非童貞は二度と童貞になれないんだぞ。
先達ぶって偉そうにニヤニヤしてると、めっさ熱いバゲットをジカに手のひらに置かれて、『あづっ』なる。
床に転がるバゲット。
金髪ギャル、笑う。

もちろん少年はこっちを見ていない。
なんかちょっと赤くなってる。
てめえ。

隣のトルコカフェから、少年の父親によるラテン特有のテンション高い笑い声が響く。
どうやらトランプでバカ勝ちしてるらしい。

地球が滅亡するアカツキには是非、このバゲット屋のバゲット食べたい。
ここには説明の必要な本当や、ウソがない。

ような気がする。
気のせいか。

replyet.

log [ コラム ] — s_o @ 20. 4月, 2005

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最近毎朝、電車でGrevenBroichというトナリ町に行ってます。
窓のソト、ねぼけた意識の表層あたりで勝手に流れてく風景。
白い花いっぱいつけた武骨で中途半端な木がいちいち気になる。
工場の脇 平野のスミ ライン川のほとりに、消し忘れた重要なシルシみたいに咲く。
見てくれよこれをよ。とか、ここにおらなあかんねや。な感じがあんまりないくせに、
やけにそこにおる。
眠りたいのに目を奪われ、どだい迷惑。
花の名前をスラスラ言えるニンゲンを、素敵!とか思ったことないけど、
でもそのときトナリで『あれは、○○。』とか呟かれたら
それが独り言であっても、3秒でこの世で最も尊敬するヒトとかになりそう。
コンパートメントの斜め向かいに、二人分の席を一つの尻でカバーする樽みたいなおばちゃんが座ってたけど
彼女でも問題なく大事なヒトになる。
あの白い花の木の名前を知ってるニンゲンなんて
今まで出会ったなかにタるほどいたのかもしれない。
なんにも知らないまま、通り過ぎたり忘れたり。
個の在り様とか、誰かや何かとの関係とか、
きっと残酷とよぶにたえないようなあっさりした暴力の固まりで、
永劫 語られる事のない闇が無言でニヤニヤしつづヶるんやろう。
覗き穴の向こうから無傷のまま。
でてこいクラっ(覚醒の兆しない寝ぼけ、つづく)

decord

log [ コラム ] — s_o @ 19. 4月, 2005

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ゼッタイに失うべきやなかった。
寿命くらいしか生きへんのに ヒトはそういう風に後悔できるんやろうか。
開いてもーたドアは、後ろ手には閉められへん。
開けっ放しの記憶からは、永遠にだだもれる。
螺旋階段やなく螺旋。
ギュンギュンまわる乾燥機の中のナマざとり。
30分たったら、開けんといかんわそれ じいちゃん。
ベルギーレジデンスのとき招待されたノイズのライブで 片足のおっさんが狂ったように踊ってた。
何時間か前に知り合ったそのおっさんが楽しかったのか楽しくなかったのか全然ようわからんかったけど
男に、意味不明で壮大な 吐き気と違和感を感じた。
大声で笑い散らす片足の彼は 茫漠とした孤独な悪意を抱え込み、言葉なく語る。
残らず満足しているか、存在しうるナニモノにも納得できないか。
どっちかだ。このごろ。
もうちょい、まんなかくらいでイかれへんねやろか。
ジタバタすんな。
片足が笑う。

doggy : paddle

log [ コラム ] — s_o @ 08. 4月, 2005

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ソーセージをほおばりながらアトリエに向かっていると、
黒い小犬が全力疾走でついてきた。
全力疾走、ゆうても
こっちはソーセージにかけすぎたマスタードのせいでスーパー牛歩だったので、
犬が勝手に全力だった。
足もとに追いつくと犬は踵(きびす)を返して此処からは姿も見えない飼い主の方に向かって駆け、
思い直したように鮮やかなVターンをきって足もとにまた戻ってくるのだった。
元来 生き物の『走る』は目的じゃない。
一刻を争う目的に少しでも早よ近づく為に走り、
個我をおびやかす差し迫った難から逃れる為に走る。
この犬はアホなんだろうか。
事態は決して切迫してはおらず、
小犬の緊張感皆無のその表情からは、とりたてて目標へ向かう強大な意志も見受けられなかった。
犬は、全力で走った。
走らなければならないから走るのではなく、
どうしても手に入れたいから走るわけでもない。
ただの全力。
滑稽だ、意味不明だと笑い飛ばされる類の渾身。
その小さな視界のソトガワでは決して価値や評価を与えられることのない個の在り様。
ヘッ、ヘッ、と舌を出し息をきらして、
黒い小犬は物欲しげに見上げる事も、媚びせがみ一声吠えることもせず、
ふつうに全力だった。
7割がた食い終えるまで、視界にカットインする足もとの黒い影が犬だと気がつかなかった。
はたして気がつかぬ程度の存在だったそれに、
意図せず存在を問われそうになった。
効率的、合理的に組み立てられていく景色。
誰もが全幅の安堵はせぬまでも、歴史も思いもその中で形作られる。
目指すところや大いなる理想、達成すべきビジョンや積年の願い。
もちろん時代という誘因があって、そこでヒトがとる行動やその内的過程ゆうんは
しかるべき場所と意義を持つ。
ただ。
いや、そりゃないだろ。いう矮小なモチベーションやベクトルに、やにわに目を奪われる。
くだらない、生産性のない、帰属すべき必然もない、一瞥のもとに掻き消される道端の衝動は、
十全に屹立する世界そのものだった。
残酷で、とるにたりないアリフれた物語は、語られることなくその体を永遠にする。
鳥かごん中のフンみたいに、宇宙中に散らばる。
そのシミみたいな斑紋は透明で質量もなく、ずっとそこにあり続ける。
凡庸で幼く、絶望的に完璧な姿をとどめたまんま。
いや、それはええけどソーセージやれへんぞ。犬。
ほらマスタードかけすぎててそんなにンまくないし。
(うそ。うまい。)

オンガク

log [ コラム ] — s_o @ 06. 4月, 2005

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口をひらけばもう音のことしか話さないし
アタマん中は365日24時間なにがしか音が鳴ってる。

おもしろくないニンゲンやな。

脳みそのあらゆる部署がなんらかの形で音にイッチョ噛んでるので、
生活やコミュニケーション能力や恋愛や季節感や大事な記憶が、
ガンガン欠落していく。

カラダ固定で足こそばされたが如く、ふにゃふにゃ笑けてくる。

やーぁーめーぇーてーぇーくーぅーれーぇーよーぅー
うきゃっ

『なぁそれ、ただのアタマでっかちやて。』

まぶたの裏あたりでダンディーな声。

覚悟せなあかんのは
覚悟という名前が必要な脆弱なタマシーしか持ってないからだ。

なんやこれ!スポ根か!古いぞ!このヴィンテージっ子!あいまい!あいまい一番!
と今風を気取ったところで、

『年とりゃ楽になるよそーゆうのんは』
とかテメエの過去をこちらの未来になすりつけられたところで、

求めてた景色は、馬の目前にぶらさげられたニンジンくらいのとこにあっさり拡がる。
 
そこにあるのがわかってるのに鼻先が着地しないとやっぱり、フがっフがっってなる。
 
 
全部忘れてしもて、ええ。

ぃぇーい。

フガっっっっっ。

Herzlich , Herzlich

log [ コラム ] — s_o @ 02. 4月, 2005

サヴトレで相方のカズ氏がタンジョウビなので、
通称”日本人ストリート”にある居酒屋で飲む。

駐在員で満席。みんなリッチやな。
うなぎとか、ぶりの刺身とか喰って
目玉が取れそうになる。んますぎ。

値段で、ほんとに目玉が取れる。

やっぱりケーキとかないとしまらんので、
遅くまでやってるカヘへハシゴ。

ロウソクとか刺さないと、これもまたシまらんので
居酒屋でパクったマッチを刺す。

わびしさ爆発↓
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、、、。

なんかカズさん、嬉しそうやな。
おめでとう。
スタッフが気ぃ遣ってくれて、
店内にハッピーバースデーソングが流れる。
横にいた見知らぬ女の子達が、パチパチ拍手してくれる。

気まずい。

テーブルの上には、マッチの3本刺さった切なさ極まりないケーキ。
店のスタッフからは、関係ないこちらにまで「おめでとう」ビーム飛んでくる。
カズ氏に至っては、額から冷や汗が流れていた。(写真参照)
こちらは全体的なその気まずさが楽しくて仕方ない。(飲みすぎ)
同情するなら蔑んでくれ。
ライブやってる時より、カズ氏とシンクロしてそう思った。

ところで友が生まれた日ゆうのは、
別にめでたくはないけど、なんかありがたい。
おおきに4月2日。
なんて不吉な数字や。

(c) 2019 sub-tle.