koeD

log [ コラム ] — s_o @ 29. 8月, 2005

26-28 Aug 2005 :::
koe1.jpg
::: ベルギー・Warneton
こないだCIMAYでも会った映像プロダクションのディレクターが目を丸くして話しかけてくる。
『こないだサウ゛トレ見たぜ!おまえめっさシリアスに演奏しとるやんけ!ゲラゲラ』
“普段アホづら”を遠慮なく言い渡された紺碧の空の下のアホづら。

koe2.jpg
::: フランス・Lille
スペイン雑誌のカメラマン・ヴィンセントが『ちょっとそれ貸してみ』ゆうて撮ったオペラハウス前の教会。
シャイな外人、ゆうのは一緒にいてとても安心する。
外人はおまえだ。
それは言い訳のように跡づけられた戦後コンプレックスの
据えた匂いのするひっくり返りだったり。
ええ写真やね、言うと
おまえが撮ったのとあんま変わらん思てるやろ?おれのはここのカドんとこがこぅ、、、
とニヤッと笑う。
欧州人、ニヤッと笑うときウインクするのんがいる。
あまりにもかっちょばええので、習得しようと試みるも どうやっても桜金造に。
困ったような、てんで困ってない中途半端な笑み。

格好わるいことは、最も格好のよいことだ (桜金造 談)

バラン州

log [ コラム ] — s_o @ 22. 8月, 2005

050822.jpg
他人を見透かせるヒト、ゆうのがいる。
若いや年寄りや関係なく。
正確に言えば、こちらが見透かされるような気がするヒト。
ホントに見透かしていようがいなかろうが、それは比較的どうでもよかったり。
こちらが知覚した瞬間にそれは側面であり真だった。
見透かしニンゲンに出会うと、必ず尻の居座りの悪い気持ちになる。
裸になっても入れ墨なんかしてないし、
『おまえがおまえの言葉で語れること』とか、もしかしたらこれっぽっちもない。
服を着て、雲にヒトリゴチることで
なし!ナッスィング!おまえ!ゆうて、ズバーンとデコピンされることを
無我夢中で回避の寸法。
自意識の裏返しで悪態をつき、
奥底ではできるかもという微弱でソリッドな確信を抱きつつ、
いつでも見透しニンゲンに戦いを挑む。
それはヘラヘラした価値のない痴話ゲンカ、
勝ち負けを無視したウワベの愛想だったりする。
だからといってそこで『勝ち』か『負け』でなきゃ、ここに存在してること自体疑わしいし
できれば そこで『戦っていません』って嘘つきたくない。
勝ち負けにこだわっているようじゃ甘いねおめぇ、ガキだねぇなら
甘くてすっぱいガキ上等。(鼻はほじらんでいい。鼻は。)
吹けば飛ぶ自ガは、とてつもなく幼稚で
おい、、おまえ、、、まだやってんのか、、、てジじいになっても言われちゃったり
痴呆なのに虚勢はってもたり
思い込み激しさの勢い余って寿命疑ったり打ちのめされたり。
そもそも勝ちでも負けでもいい一人戦さ。
武器の選択。不離の洗濯。不義の千択。
ニンゲンが多くなりすぎて、塹壕のチケットがもう完売。
柔道教室でちっさいのんが『今日こそはこいつを負かしたる』と
やる気満々でブンブン腕まわすテイ。
輝く目、空回る衝動。
頭を右手で押さえられながら
きみ、こどもクラスはあっち。ゆわれても
もうお弁当持って、来ちゃったのだ。

薔薇の樹とカミ

log [ コラム ] — s_o @ 18. 8月, 2005

050813.jpg
線路ぞいの長い小路に、イチゴがなってた。
お、イチゴやと モイでパクパク食う
おまえはジムシーか。
コナーンここだここ。
顔を上げてよぅ見ると、イチゴはみち沿いに果てしなく熟っていた。
夏のあいだ中ここにいれば
働かなくても食ってけるんじゃないか。
冷たい夏のド真ん中 立ち止まる。
赤いのんより黒いのんほうがンまい。

050816.jpg
ローゼンバウムさんとこの印刷所は
古くて何に使うかわからない胡散臭くてカッちょいい機械がたくさん並んでいる。
ローゼンバウムさんが紙を裁断するときに使うのは
静かで重たいノイズののる巨大で古びたマシーン。
おっさんは肘のトコまで突っ込んで調整するので
裁断する瞬間とか とてもじゃないけど直視できない。
ドフ、と感情の匂いがまるでしない乾いた音とともに1ミリもずれず20センチ角の正方形。
ローゼンバウムさんの肘から下
当たり前のように、でも奇跡的にいつもそこにある。
印刷所のヨコには駄洒落のようにRhodes(エレピ)の店があって、
そこで弾かせてもらうSuitcaseの音色は 正しくて情けない全てを支持する寛容さで静かに響く。
Rhodesとトロンボーンしか置いてない圧倒的に偏った品揃えのこの店
ドイツでは珍しく店員がよく話しかけてくる。
いや、狭いから仕方ないのか。
てか買わないなら帰れよ。おまえ。
目を付けていた状態のいいアンプ付きのやつが、売れてしまった。
いっつもそればっか弾いてたのでおっさんが
『あれもう売れたよ。再来週、状態いいの5台はいるよ。』
てか買わない(買えない)のにグッドアドバイス、すまんおっさん。
白と黒の板から小さなテコをいくつも咬ませて、鉄板を棒で叩く。
ニンゲンは暇つぶしの方法を見つけるのに長けている。
ダッチワイフや散弾銃や、言葉や流行色や水族館。
アンプからは、とり立てて意味も物語も与えられなかった時間の匂い。
バチバチとクぐもったビューからは泥臭くて生ぬるい、溜め息じみた振動。
お気に入りのRhodesがなくなったし、やることがないので
『ちょっとトロンボーン吹かしてよ。』言ぅたら、
もうお前帰れよ頼むから、ゆう顔された。
折り目正しい英国紳士のような惰性じみた精緻さで
今日もきっちり日は暮れる。

偽装ドラムとメアリー・ポピンズ

log [ コラム ] — s_o @ 12. 8月, 2005

050814.jpg
後悔って、後でするもんやなかったっけ。
感情の芽ぇが、にょりっと生えてくるノキから悔いる。
怒りながら笑いながらがっかりしながらキラキラしながら後悔する。
ていうかもう、後悔してから ぅぁー ゆうて感じてる感じ。

エスカレーターの刻む一定でインダストリアルな微細ケコケコ5拍子が唐突にブレる。
赤道のごときぶっといベルトを腰に結い付けた女の子が、
その健康的で帝国的な白い肉をたんぷりとパンツにのせ
手すりに飛び乗ったのだった。
だってお姫様だもの。

3年分の記憶が鳩の糞になって飛んでいくくらい酔いどれた彼女は、
おそろしく美しい歌声で”SOUND OF MUSIC” を歌い始めた。
周りには2人の男と1人の女。
ダブルデートの壮絶に杜撰なエンドロール。
音、豪華。

ひきつづき ”SINGIN ‘ IN THE RAIN”
雨に打たれるのは君ではなく
路上で一人打ち上げ花火大会(口から)を開催するであろう君の晴れ姿の
観客たる彼らなのです。
いいっすもん。お姫様っすもん。

自分が 『ごめん』 言ぅた世界が、
振り返りざま 『ごめん』って言う。
どっちにも凄まじく感情がこもってない。

冤罪

log [ コラム ] — s_o @ 10. 8月, 2005

050810.jpg
長いストラップのついた日傘を襷(たすき)がけにし、
左手に杖をついて歩く老人がいた。
地下鉄のホームを端から端まで、ゆっくり行ったり来たりしていた。
電車が待ちきれなくてイライラする気を紛らしているのか、
リハビリはやっぱり終日日陰な地下鉄のホームにかぎるのか、
よくわからないけど老人はとにかくひたすら行ったり来たりした。
老人の左の靴は右とカタチが異なっていて、
底あげされ 巧妙にそれとわからぬよう革張りされていた。
どうやら老人は左足と右足の長さが違うようだった。

それはいいけど、じじいはベンチに座っている自分の前で
いちいち立ち止まってこちらをガン見した。

知らない人に睨まれた時のリアクションの種類は数あれど、
運悪く過去に『右足と左足の長さが違うじじい』に見据えられることがなかったので
どういう反応をすべきかとても悩んだ。
2回目までは、ホームでたまたま中心にあたるこの位置で一休みしているのだと
自分と世界間における懐柔政策的な納得をしていた
(それは幽霊を見てもたあとの『ああ車のライトね、車いないけど』みたいな納得の仕方に似てた)
3回目ともなると、なんかさすがに腹立ってきて睨み返した。
舌打ちとかため息とか、ロクなフィードバックもなく老人は
またキュッ、カツ、とおそろしく単調な音をたてて歩き始める。
3往復目の6回目。
変わらず同じやりとりが繰り返されたあと、
自分から見て左側20メートルくらいのところで、再び老人が立ち止まった。

じじいは乾いた音をたてて屁をこいた。

プヘっ、というガッツのない音が地下鉄構内の暗いエコーを纏って響く。

クヤシいけどそのとき唐突に
じじいを睨みつけたことをひどく悔やんだのだった。

ひとつの物事を知ろうとして、
本を読んだり誰かと話をしたりする。
それは不気味で静かな経験のようなものになって胸やアタマに沈殿する。
経験はやがて外の空気に晒され判断の礎になるけど、
そうしてなされた判断はいつだって判断以上のものじゃない。
正しくも間違ってもいない、正解にも不正解にもなれないただの判断。
『経験した』個による批評や助言や応援や非難は、積み重ねられない小さな丸っこい石に似ていて
誰かの上に重なることなんてない。
そこに適当な間を置いて、ぽつりぽつりと並んでいくだけだ。
地平線の見えるグリッドもない平面に、小っこい石がランダムに散らばっている光景は
なんかまるで心に引っかからなかった。
ものの20秒で、顔面を鈍器で殴られたような衝撃。

くっさ。

あまねく若手を凌駕する、豪快な表現力。

アン個

log [ コラム ] — s_o @ 09. 8月, 2005

050809.jpg
いま何月やったかわからなくなる冷たい朝。
寝起きの頭の中 『南の島のカメハメハ大王』が流れだす。
あ、そうなん?他人事のように受け入れる意志もナマエもない一日。

南の島に住む人は
誰でも名前が カメハメハ
おぼえやすいがややこしい
会う人会う人 カメハメハ
誰でも誰でも カメハメハ
カメハメハ ハメハメハ
カメハメハメハメハ

自分自身である、ということは言えない。
カメハメハか ハメハメハか知らんけど、
大江健三郎とかジョンレノン系かおまえ。
系って言うな。
半端にくくらず個性はまるごと否定してきたい。
2秒で向こう側に手がつく薄っぺら自我への無駄に涙ぐましい反動調。
情緒の尾っぽに欺(あざむ)かれたり、
スピリチュアルなものを妄信する全てから逃げてるうちに
本質とか、かなりどうでもよくなってきた。
ハメハメハメハメハー
 ハメハメハメハメ(永遠に輪唱)

ger_code

log [ コラム ] — s_o @ 04. 8月, 2005

050804.jpg
『 “時間ない” が口癖だったオフクロが死んだのは一昨年だ。 』
40分待っても電車が来なかった。
久しぶりに夏らしいウンザリした昼下がりに、
そのホームレスはペットボトルのビールの蓋をしきりにヒネリながら
やることなさすぎてホウけるジャパニーズに話しかけてきた。
ときどきわからない単語があるので
聞き返すとホームレスは面倒くさそうにそれに答えた。
答えられてもいまひとつ意味がわからないので、
吸いかけの煙草を線路に投げて欠伸をした。
おっさんが『乾杯』と叫んだ。
無駄に長い野ざらしのホームには、自分ともう一人若いドイツ人がいて
ペットボトルビールを飲み終えたおっさんは今度は瓶のビールの栓を抜きながら
暇そうに一人ビールを飲む彼にもコミットしたのだった。
3人並んでベンチに座って、
何を待っているのかわからなくなるまで電車を待った。
たまにかわされる会話の中 まだ単語を聞き返していて、
今はその若者がよりわかりやすくその意味を説明した。
広げた左手に右手でコブシをバシバシ打ちつけて、にやっと呆れたような笑み。
ああ、セックスの話か。
おっさんは意味が伝わって嬉しかったのか、
自分も同んなじ動作をして、右手のコブシを大きく空に突き上げた。

『今年20になる息子が連れてきた嫁は、3人目だ』

電車は随分前の駅から遅れていたらしく、珍しく人でいっぱいだった。
訳の分からない取り合わせの3人はなんとなく乗客の視線を集めて、
電車は意志と痛みのない動物みたいにそれら全部を東に運んだ。
おっさんは次の駅で降りて、同じ駅で降りる若者とはそのまま話をした。
父親のアコーディオンの話をしながら、若者は鞄から出したビールをこちらによこした。
ウ゛ァイツェンビアの底に溜まっているカスを効率よく沈殿させる技をならって
窓のソトを流れるいつもの古い街並を眺めながら飲んだ。
電車の揺れはそこで初めて役割を与えられたみたいに酔いに倣う。
降りた駅のホームで腰掛けて話をする。
ウイスキーの小瓶を2本買ってきた若者は1つこちらによこして、
ゴミ箱にもたれかかって嘔吐する真似をして笑う。
歯磨き粉みたいなアジのするウイスキーは一瞬でなくなって
地下鉄の乗り口まで降りて若者を見送った。
「また。 ダンケ。」言うと
『おい、ダンケとかねえだろ。なにありがとうだよ。』
若者は怪訝な顔をして口許を歪めた。
中央駅の出口からアトリエに向かって歩くとまだ夏だった。
この目から見える全てには名前がなくて
とうの昔からそこにあった景色は、まだ何にも与えも与えられもせず
ゆっくりと肥えた。
こころざしなんてものがなくなってしまうまで繰り返したいと願う。
ヘッドフォンのコードの先っちょがどこにも繋がっていないことを悲観するほど
複雑でも単純でもないような気がした。

(c) 2019 sub-tle.