welt nr.1

そこに人外が在る。
それはとてもヒトの形をしている。
うわついた声が探したのは
角度のついたその窓が映したのは
妊娠線のように美しく歪んだその破顔の笑みがまぶしくて
また目をつぶった。
夢は見なかった。

そこに人外が在る。
それはとてもヒトの形をしている。
うわついた声が探したのは
角度のついたその窓が映したのは
妊娠線のように美しく歪んだその破顔の笑みがまぶしくて
また目をつぶった。
夢は見なかった。
27th – 29th Sep 06/ Paris

具体的にすればしようとするほど、遠ざかる。
目が醒めるような正直で真摯な直球て、曲がる。
100年1000年前からその形を変えることなく
蔓延し フタをされ 名付けられ 憎まれ 渇望され
それはそこに在った。
カビの生えたパテを屑入れに放り込むと
義務づけられたみたいに精緻極まりない動きで
小っちゃい虫が草臥れた面の下敷きになる。
空が高い。
あと凱旋門、遠い。
やめて。

誰かの為、じゃない。
我身の為、でもない。
29th. Aug. 2006

ロシア・モスクワへ。
ウ゛ィザ取るのにも一悶着なその国の現在(いま)を知るにつけ、
「酔っぱらった次の日の朝におねえちゃんが裸で横に寝ててもプラス思考」な脳みそだって
にわかに歯が立たない絶望。
ああ、まだ生きて○○したかったな、死ぬなら○○しときゃよかったよ。
の○○に該当するものが特に思い当たらなかったので、何に絶望してるのかよくわからない。
検閲済みのじじいのように平和ぼけた自我にがっかり。
早朝、空港へ向かうTAXIに乗り込む。
『8月なのに13℃だ。いや12.5℃だ。おい、見てみろこれ。』
ドライバーは朝っぱらからハイテンションにモニターを指差し息巻き、短すぎる夏を糾弾。
うわの空で相槌を打ち、フロントガラスに映り込む大嫌いだったドイツの曇り空を見上げる。
雲間からの唐突な太陽と青空、目に眩しい。
ドイツ。
悪くはなかった、とうなづく。
欠伸(あくび)でる。
「短かったね夏。でもおれ今からモスクワよ。それもどうよ。」
『うっわ最低。』
別れ際、彼はラジオのリズムに乗って
プーチンプーチン〜プ〜チーンと口ずさみながらスーツケースをおろすのを手伝ってくれる。
杜撰(ずさん)な餞(はなむけ)ソングに舌打ちしてチップ。
チェックインなんてフライト1時間前でいいだろ、というこちらからの提案に
『いや、絶対2時間前です。モスクワ行きですよ。なにかあったらどうするんですか。』
と断固譲らなかった同行のYは、きっちり1時間遅刻してやってくる。
さしもな過失をフォローするかの如く、飛行機は3時間遅れる。
さよならドイツ。
さよなら色々。
30th.Aug.2006
31th.Aug.2006
1st.Sep.2006
2nd.Sep.2006
3rd.Sep.2006

そもそも人間が二足歩行を始めた頃から備わっていた機能は
当初想定されてたけどあんま使わん部分を削ったり、必要になって後から追加されたりして
時代やら環境やら何やらにチューンされている。
日本で生まれて今はドイツにいてるこの体が
今まで全く使てなかった人機能に、ここロシアでは終止ONランプが点灯している。
埃をかぶってくすんだその淡い緑色は、心に遠い。
その薄ぼんやりした目映さに眩んでいたけれど、
そういえば元気よく点灯していた今迄の人間機能は
人知れずスイッチ切られてることに気がつく。
もう蓋が閉まってしまったそれはきっと西の旗だった。
名前があるかぎり、名前をつけられるなにものかが対象としてそこに形成すかぎり
それはとても脆くて、儚い。
:::
ときに旧共産圏の官や警察は迫力が違う。
あちらこちらでメタルチェック。
『生きてる』んではなくて、
それを許してくれるものが、あるいは”此処”の”対極”についてなんとなく忘れてくれてるもんがいるから
『生かされてる』だけだった。
スイッチ押せるやつが、気まぐれでもなんでもただスイッチ押さへんからここにいる。
スターリンゴシック建築のうち、モスクワの7棟「セブンシスターズ」の一つ
МГУ(エム・ゲー・ウー/モスクワ大学)の荘厳さ。
(部屋が45,000室あって全部廻ると145キロ歩かなならんらしい。)
車の汚い窓越しに見たその白さ巨大さはとても美しくて
なんや見えへん壁に トン、て閉ざされた気がした。
『自分自身』は いつもすこし滲(にじ)んで、
縫い付けた袖から溢れた世界は またありふれた。
4th.Sep.2006

ドイツ帰国。
昂らず、覚悟せず、知らない人の車に乗ることのできる国に帰ってきた。
煙草を一服して横になると、次に目を開けたのが20時間後だった。
曇った朝に窓をあけると
忘れることに躊躇いも衒いもない9月の風、肌に冷たい。
なに。
もう秋かよ。
夏、みじか。

随所でフリーズしていたサイトコンテンツを少し更新しました。
こちらから。
どこが変わったか今ひとつはっきりしない、自分探しに失敗した夏休み明けの高校生のような更新です。
sub-tle.com slightly updated.
plz check from here.
some contents are still on the way …
音も聴けるようになりました。
こちらから。
未公開音源”pre_mary”もフルレングスで聴けます。
now you can hear the several sound from our archives.
plz check from here.
You may need latest Flash plag-in.
new title ”pre_mary” could listen as well.

よく晴れた。
噛みちぎれない肉は白くて
吹けないニンゲンが感情無く演奏するラッパの音みたいな味がした。
完全な孤独を渇望するのであれば そこに必要なのは誰かであり
知覚や内側”以外”へのコミットは結局のところひとりぼっちでしか成し得ない。
一はいつだって全体そのもので
漫然と横たわる寂寞とした甚大なパラドックスの前で、スカしたり忘れたりしながらヒトは。
トン、トン、トン、と拍子を刻みながら
目の前で流れている便宜的で切実なものを眺める試み。
たとえば緑の中、目を刺すコンクリートが
今ここが10億年前ではないことを思い出させて
そのことに安堵する要領。
やっぱウチがいっちゃんええわー とそこに荷物を置いたおばちゃんの歴史や記憶やこれから。
砂漠の入り口に立つ電信柱的なこと。
23のとき、ケンカ別れした友人がしょうむない事故で死んだ。
なあ、おまえシランやろ。
優越感が、此処に立っているチカラになった。
具体的に晴れ渡った青い空ははっきりしないぼんやりした静謐さをたたえ
ゆっくりと飛び交う綿毛はいまひとつやる気のない大仰な管弦楽みたいに街を覆い
肉の味だけが深刻なフリしたシミになる。

目が5つある巨大なうさぎが
ガーベラのように花弁のくっきりした花の中心をこちらに向け、
もっそ感慨ない感じで佇んでいる夢をみた。
うさぎがどこ見てるんかようわからんかった。
意識遠く焦点も合わず正面に座って
ぅわーゆうくらい何の感情もなく、そこでうさぎと対峙し続けた。
花弁がひとつ、音もなく地面に落ちて
なんだかとてもくだらなくて切実なことを後悔した。

6月3日、ネオナチのデモ。
ネオナチの蜂起デモなのか、アゲインストの撲滅デモなのか
昨日から情報が錯綜してたけど、結局両方だった。
タマゴとニワトリみたく始まりが見えないまま
右翼と左翼 互いがなにか目に見える形で叫んだ。
戦争が遠い。
それは自分が殴られていないからで
もう殴られているのに、そのことに気づきさえしてないからなのだった。
東通りの駅が1つ封鎖される。
緊張感のない警備員が、電車から乗客が降りてこないようにホームをぼんやり眺めた。
中央駅では談笑しながらポテトを食べている警官達が
連なったバンとバリケードの前に透明の盾を立てかけて通りを封鎖した。
パンを齧りながら、バリケードをくぐってアトリエへ。
ラジオで警官が一人やられたというニュースが流れた。
晩までクラウスらとレコーディング。
レコーディングが終わって中央駅に戻ると
サッカーファンとパンクとデブなおばちゃんの色なすいつもの風景。
家の前で、弁護士のヨハン(仮名)に会う。
話題がないのでデモの話をすると、
『なあ。おれは、ナチスが嫌いだ。』 と
居心地わるそうに言った。
ヨハンが突然申し訳なさそうなことに とても尻が痒かった。
大学のとき、ナチズムの論文を書いた。
ナチスという体制そのものよりも
1938年にそこにおった隣のおばちゃんがスーパーでネギを選び、
夕ご飯がおいしく作れたかどうかにアタマを悩ませていたその部分だけ
古くさくてテンションの低い資料の山から抜粋し続けた。
口頭試問では『内容はさておき』的な空気が部屋に立ち込め、
こと資料の量だけが取り沙汰された。
ハイネマンさん(83)の一日で試問の15分を埋められないことが
凄惨で平らな世界の定理を小気味よく示して、
塹壕の中に残った思い出と冷蔵庫の中に残された記憶は
時間の流れとは無縁にとても静かだった。
ここから見える景色は、いつも『それがそこにあることの証拠』みたくそこにある。
突然の強い風が6月の街路樹の葉を揺らし、
まだ少し揺れる葉がすぐさま、それが5秒前の真であることを立証するふりをする。
『本当』であることに少しのブレも許さない静かで杜撰な思いは、
時間によって削られることなく、曖昧で起点のしれない歴史になる。
ぼんやりと翳ってきた土曜日の空が
なんだかとても大幅で深刻なヨソ見をしてる気がして
ボンヤリ見上げていると、雨。
目薬もちゃんと入れられないのに、ちゃんと網膜に着地して
しばらく一人モがく。